資産運用とリバランス

前回はNISAとiDeCoという制度をどう活用するかという話をしました。 ここからは「投資を始めたあと」の話に入ります。 資産運用をするとき資産を投資する割合を決めてその割合で買うのが一般的です。 しかし、買った資産のバランスは市場の変化にともなって時間とともに自然にズレていきます。 このズレを元に戻す作業が「リバランス」です。 今回はリバランスの目的と実践的な進め方について整理します。 配分は放っておくと崩れる 株式と債券は値動きが異なるため同じ配分で投資を始めても時間が経つにつれて比率は変わっていきます。 市場が成長していれば株式の方がリターンは大きいので株式の割合が自然と高まります。 たとえば株式70%・債券30%で始めたとしても、数年後には株式80%・債券20%といった配分になっていることがあります。 もちろん逆のケースもあります。 暴落後は株式の比率が下がりすぎて株式60%・債券40%となっているかもしれません。 バランスがズレているということは当初の試算に対してリターンとリスクが崩れているということになります。 株式の比率が高まっていればリスクを取りすぎている状態に無自覚のままなっているということです。 逆に暴落して債券比率が高いままでは本来取れるはずのリターンを取り損ねる配分になっているといえます。 リバランスはこのズレた比率を元の配分に戻す作業のことです。 増えすぎた株式を売却して債券を買い増す、逆に債券を売って減った株式を買うということですね。 比率を正してリターンとリスクを正常化します。 これは結果として「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う」ことになります。 つまり機械的に高値売り・安値買いを実行しているわけですね。 ここで重要なのはリバランスは別に相場を見て判断しているわけではないという点です。 あらかじめ決めた資産の比率というルールに従って淡々と動くだけです。 感情に左右されずに済むことがリバランスの最大のメリットになります。 「相場ではなくシンプルなルールに従って取引できる」というのは投資を続けるにあたって非常に重要です。 暴落時に相場を見て狼狽してしまうという状態を避けることにつながるためです。 人は相場が上がれば「もっと伸びるのではないか?」と欲がでる生き物です。 一方で下がれば「まだ下がるのではないか?」と不安になります。 その場の判断に任せているとこの心理に流されてしまい利益を逃したり損失を拡大してしまいます。 あらかじめ決めたルールに従って機械的に取引することで判断のブレを排除できます。 ルールを決めて淡々と守り続けることが長期的な利益に結びつくのです。 リバランスの手法:売買と新規資金 さて、実際にリバランスのやり方について見ていきましょう。 リバランスには大きく2つの方法があります。 方法1: 増えすぎた資産を売って減った資産を買う バランスが崩れたうち多い方を売って少ない方を買うということですね。 一般にリバランスというとこちらを指すことが多いでしょう。 直感的にも理解しやすいのではないかとおもいます。 この方法は王道であり基本的にはリバランスこの方法で行うと考えてよいでしょう。 課税口座の場合は売却益に課税されるという点は注意が必要です。 NISA枠でも一度売却すると枠の再利用には年間・生涯それぞれに制限があるため単純にやり直せるわけではありません。 (NISAは購入時の金額なので利益がでてから再購入するともったいないのです) そのため、可能であれば方法2を使うとよいでしょう。 税金が勿体ないからリバランスしないという人をたまに見かけますが、それはリスクとリターンのバランスを崩して資産を危険な状態にしておくほどの価値があるのでしょうか? 利益に冷静さを失って間違った判断をしていないか落ち着いて考え直すべきです。 方法2: 新規の入金・積立分を比率が減っている資産に多めに振り分ける 手持ちの新規の資金や待機資金で購入する際にバランスを整えるように購入するという方向です。 株価が上がっていれば債券を多めに買い、株価が下がっていたら株式を多めに買うという感じですね。 この方法は売却を伴わないため含み益への課税を避けることができます。 投資していない資金が必要なため誰でもできる方法ではありませんが税金がかからないというのは大きなメリットです。 ボーナスや積立などの新規資金があるならばこの方法を検討するのがよいでしょう。 とはいえ、新規の資金には限界があります。 資産全体が少額であったり、ちょっとしたバランスのズレには便利ですが大きなズレには向きません。 大きく配分がズレたときは売買による調整を検討しましょう。 タイミングの目安 リバランスの方法がわかったところで、次はいつ行うべきか考えてみましょう。 リバランスを行うタイミングには大きく2つの考え方があります。 頻度による方法: 年1回など期間を決めて見直す 乖離率による方法: 比率から一定割合ズレたら調整する この点についてVanguardが1926年から2014年までのデータを用いた検証があります。 頻度と乖離率のさまざまな組み合わせでのリターンとリスクについてシミュレーションしており、頻度や乖離率の基準を変えても大きな差がないという結果でした。 Vanguardは多くの分散されたポートフォリオにおいて「年1回または半年に1回のモニタリングと5%の乖離閾値」の組み合わせがリスク管理とコストのバランスとして妥当である、と結論づけています。 出典: Vanguard “Best practices for portfolio rebalancing” ...

2026年8月13日

NISAとiDeCo どちらを優先すべきか

前回は投資する資金をどうやって投じるかという話を書きました。 投資額と投資方法が決まったら次に考えるのがその資金をどの制度に入れるかという問題です。 NISAとiDeCoという2つの非課税制度がありますがどちらを優先すればいいのか迷う人は多いはずです。 今回はこの2つの違いを整理したうえで優先順位の考え方を書いていきます。 注意 今回はわかりやすさを重視して一般的な会社員を想定して細かい説明を省いて書いています。 あくまでイメージですので気になる人はちゃんと調べたり計算してくださいね。 違いは「自由度」と「節税の強さ」のトレードオフ NISAとiDeCoの違いは一言でいえば自由度と節税の強さのトレードオフです。 NISA 引き出しはいつでも可能(老後・住宅・教育など自由に使える) 非課税になるのは運用益のみ iDeCo 引き出しは原則60歳まで不可(実質老後資金に限られる) 非課税になるのは拠出時・運用益・受け取り時の3つ NISAはいつでも引き出せる代わりに非課税になるのは運用益のみです。 iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに非課税になるタイミングが拠出時・運用益・受け取り時の3つあります。 自由度を取るか節税の強さを取るか、というのがこの2つの制度の本質的な違いです。 節税の強さだけならiDeCoが勝つ 税制優遇とそこから得られるリターンの大きさを比べるとiDeCoのほうが強力です。 拠出時は掛金が全額所得控除の対象になり拠出した時点でその年の所得税と住民税が下がります。 下がった税金の分だけ確定したリターン(単利)が返ってくるともいえるでしょう。 戻ってきた税金分はNISAなどで再投資に回せるので実質的に元本が増えることになります。 資産運用は長期投資なので元本の違いは長期的なリターンに大きな違いを産みます。 また、受け取り時は退職所得控除の対象になり加入期間に応じた一定額まで非課税になります。 超過分には課税されますがそれでも退職所得は優遇の大きい仕組みなので税額はかなり抑えられます。 節税効果とリターンという観点ではiDeCoが使えるなら使わない理由はないというのが結論です。 それくらいiDeCoは強力な制度なのです。 ただし60歳まで引き出せない とはいえiDeCoには大きな制約があります。 一度拠出したお金は原則60歳まで引き出せないということです。 これは生活防衛資金や近い将来使う予定のあるお金の話と直結します。 急な出費が必要になったときにiDeCoに入れた資金は使うことができません。 どれだけ節税効果が大きくても目の前の生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。 NISAであれば必要なときにいつでも引き出せるためこうした心配がありません。 また、iDeCoは一度に入金できる金額に厳しい制限があります。 1ヶ月に数万円程度しか入金できないのでまとまった金額を即座に運用できません。 そのため、歳を取ってから一気に拠出するという使い方ができず若いうちから継続的に拠出する必要があります。 一方、NISAは1年に360万円、5年で1800万円まで入金できますので個人の資産運用としては十分な金額を短い期間で投資することができます。 NISAとiDeCoは節税効果の大きさと資金の自由度の低さにおいて表裏一体の関係にあるということです。 優先順位は入金力で決める ではNISAとiDeCoどちらから始めればいいのでしょうか。 考え方としては自分の資産や収入、つまり拠出できる金額によって決めるのがよいでしょう。 資産に余裕があるならばiDeCoに入れる金額をシミュレーションして計算して拠出し、それ以外をNISAに入れるというのが理想です。 老後に必要な金額をまず見積もってから逆算して毎月の拠出金額を決めるとよいでしょう。 老後まで使わないと決められる資金があるならば資金拘束はデメリットになりません。 iDeCoの節税効果は優秀なので老後の資産形成としてはなるべくiDeCoを活用したいです。 一方で、投資に回せる資金に余裕がない段階であればまずはNISAから始めるのがよいとおもいます。 不測の事態や60歳までのイベントに対応できなくなるリスクを回避するほうが重要だからです。 節税効果が高いからといっても受け取れるのは老後ですので偏ってしまっては意味がありません。 まずはNISAで投資をして資産を増やしながら余裕ができたらiDeCoを使い始めて資産運用を加速させるのがよいでしょう。 重要なポイントとして、iDeCoの節税できる機会は後から取り戻すことができません。 年金のように後から追納するようなことができないからです。 入金力があるのに後回しにすればするほど本来受け取れたはずの控除を逃し続けることになります。 可能ならばiDeCoの利用を早めに検討しましょう。 まとめ NISAとiDeCoの違いは自由度と節税の強さのトレードオフになっています。 iDeCoの節税効果は強力なので使えるならなるべく使うべきです。 ただし資金拘束があるため老後資金として切り離せるだけの余力が必要になります。 そのため、まだ入金力に余裕がなければ自由度の高いNISAから始めるという選択肢もでてきます。 NISAもiDeCoも強力な制度です。 自分が今どのように利用すると効果的なのか検討して制度を活用しましょう! 次回は投資したあとの話、運用中の心構えとリバランスについて解説します。

2026年8月2日

資金をどうやって投資するのか?一括・積立・ドルコスト平均法

前回は総資産のうちいくらを投資に回せばよいのかという話を書きました。 投資に回す金額が決まったら次に悩むのがその資金をどう投資すればよいのかという問題です。 手元のお金を一度にまとめて投資するのか、時間をかけて少しずつ投資するのかで結果も心理的な負担も変わってきます。 今回はこの資金の投資方法について一括投資と積立投資そしてドルコスト平均法を整理しながら考えていきます。 基本は決めたポートフォリオに従って投資する 投資の方法を考える前に大前提を確認します。 投資は事前に決めたポートフォリオに従って行うのが基本です。 株式と債券をどう組み合わせるかという資産配分を先に決めておきその配分どおりにお金を投資していきます。 たとえば株式70%・債券30%という配分を決めたとしたら、100万円を投資するとき内訳は株式に70万円と債券に30万円になります。 そのうえで、手元の資金状況によってどのように買っていくのか決まります。 すでにまとまった資金があるならその全額を一括投資が理想です。 反対にこれから始める人は毎月の収入から積み立てていくことになります。 ここで押さえておきたいのが一括投資と積立投資は本質的に同じだという点です。 積立投資だとしても投資に回せるお金をすべて決めた資産配分に投資しているという意味では一括投資と変わりません。 違いは今まとまった資産を持っているかどうかだけです。 まとまった資金がある人はそれを一度に投資して、持っていない人は稼いだそばから投資していくというだけの差にすぎません。 この記事を読んでいる人の多くはこれから資産を作りたいと考えている側でしょう。 その場合はすでにある貯金をまとめて投資してそこから先は毎月積み立てて増やしていくやり方がほとんどになります。 ドルコスト平均法はリターンが下がる ここでよく名前があがるのがドルコスト平均法です。 ドルコスト平均法とは一定の金額で定期的に買い続けて購入時期を分散する手法を指します。 価格が高いときは少なく安いときは多く買えるため、取得単価を均す点がメリットとしてよく説明されます。 ただし、この手法には見落とされがちな問題点があります。 資金を分けて投資するため、投資されない資金が生まれてしまうことです。 このように投資予定だが投資されていない資金を待機資金と呼びます。 あたりまえですが、待機資金はなんのリターンも生みません。 そのため期待できるリターンは下がってしまいます。 ドルコスト平均法はリスクを下げる手段だからリターンが下がるのはしょうがない、という意見もあるかとおもます。 ですが、そもそも時間分散でリスクを下げる必要があるのかというと基本的には不要だといえるでしょう。 リスクはそもそも先に決めたアセットアロケーションで管理されるべきだからです。 自分が受け入れられる水準に資産配分を合わせてあれば値動きの幅はその時点でコントロールされています。 そのため、ドルコスト平均法で時間分散する必要がありません。 理論だけを見ればまとまった資金は一括投資で問題ないということになります。 とはいえ、理屈のうえで正しくても実際に行動できるかは別の問題です。 まとまった資金をいきなり全額投資するのは多くの人にとってかなり怖いとおもいます。 その不安を和らげる意味ではドルコスト平均法で分けて投資するのも初心者には悪くない選択です(ちなみに筆者の初めての投資額は1000円でした) リターンは重要ですが長期投資は続けられることが最も重要です。 積立投資とドルコスト平均法を混同しない 最後に混同されやすい積立投資とドルコスト平均法の違いを丁寧に説明しておきます。 どちらも毎月一定額を投資する形になるため同じものだと思われがちです。 しかし両者は投資に回せるお金が手元にあるかどうか?という点でまったく違います。 まず積立投資の例を見てみましょう。 待機資金がない状態から毎月の給料から5万円を投資に回すとしましょう。 この人はその月に投資できる5万円をそのつど全額を投資しています。 まだ投資していないのに寝かせているお金は手元にありません。 これが積立投資であり実質的に一括投資と同じ状況になっています。 一方で、手元に待機資金300万円をもっている人がいるとします。 この300万円は今すぐ全額投資できるお金です。 それをあえて毎月10万円ずつ30ヶ月に分けて投資しているのがドルコスト平均法です。 この場合はまだ投資していない残りのお金が投資されずに待機資金として残り続けます。 つまり、この待機資金を抱えるかどうかという点で大きな違いがあります。 前述したように、積立投資は投資に回せるお金をそのつど全額投資しているため一括投資と本質的に同じです。 反対にドルコスト平均法はまとまった資金の一部を待機させてしまうためリターンが落ちてしまいます。 まとめ 資金の投資の仕方はまず決めた資産配分に従うのが基本です。 そのうえでまとまった資金があれば一括投資、ゼロから始めるなら積立投資になります。 両者は本質的に同じものですのでもっている資産状況からどちらで投資すればよいのか明確に決まるでしょう。 一方で名前のよくあがるのがドルコスト平均法です。 これは待機資金が生まれるぶんリターンが下がってしまいますし、リスクはアセットアロケーションで管理できるため理論的には必要ありません。 しかし、一度に投資する不安が大きいならドルコスト平均法で分散するのは初心者には悪くない選択です。 自分がどこまで値動きに耐えられるか考えたうえで選んでみてください。 次回はNISAとiDeCoの使い分けについて解説します。

2026年8月2日

総資産のうちいくら投資に回せばいいのか

前回は株式だけでなく債券を加えてリスクを管理しようという話を書きました。 今回は「どれくらい投資すればよいのか?」という問題についてかんがえていきます。 リスクを抑える組み合わせ方がわかっても次に気になるのは金額です。 手元の資産のうちどこまでを投資に回していいのか迷う人は多いはずでしょう。 考えるポイントは生活防衛資産と近い将来に使う予定のあるお金にあります。 この2つを整理したうえで投資する金額を検証できるようになりましょう。 生活防衛資産を確保する 投資する前にまず最初に確保しておきたいのが生活防衛資産です。 生活防衛資産はその名の通り生活を守るためのお金です。 たとえば病気やケガで失業して収入が途絶えてしまったり、予期せぬ冠婚葬祭や車の故障といった急な出費に備えるためのお金を指します。 生活防衛資産を用意せずにすべて投資してしまうのは危険です。 これには2つの理由があげられます。 1つ目はリスク資産を強制的に売却しなければいけない事態を避けるためです。 突発的な出費と市場の下落が同時に起きてしまうとあなたは損失を回避することができません。 場合によっては、下落によって出費に耐えられるだけの資産がない状態になる可能性すらあります。 2つ目は心理的な負担の解消です。 生活防衛資産があることでなにか起きても生活を立て直せるという安心感が得られます。 これによって市場と生活の安定性を切り離せるため、安心して投資を続けることができます。 では、どれくらいの金額を生活防衛資産として用意すればよいのでしょうか? 目安として会社員であれば生活費の半年分という基準が広く利用されています。 金額としては一人暮らしであれば100万円、4人家族であれば200~300万円ほどになります。 このくらい用意していれば大概のアクシデントに耐えることができます。 注意点として、フリーランスなどの場合は傷病手当といった失業時の保証が弱いため多めに用意することが推奨されています。 具体的には生活費の1年分程度が望ましいでしょう。 使う予定のあるお金も低リスク資産に置く 生活防衛資産は病気や失業といった予測できない出費に備えるためのお金でした。 一方で教育費や車、住宅のようにあらかじめ使う時期が決まっている大きな出費もあります。 これらも計画的に準備する必要のあるお金です。 大きな出費が予定されているのにすべてを投資資産に置いてしまうと生活防衛資産と同じ問題が起こり得ます。 たとえば使う時期になった時にたまたま値下がりしていれば大きく価値が毀損した状態で売る必要がでてきます。 こういった出費は金額が大きいだけに値下がりによって必要な金額を用意できない問題が容易に発生します。 使う予定があるお金は定期預金や債券などリスクの低い資産に置いておくと安心です。 目安として景気の循環サイクルから3~5年以内に使う予定がある分は安全な資産に移しておくとよいとされています。 生活防衛資産と合わせてこの資金も投資とは切り離して考えておきたいところです。 残りを投資資産に回す ここまでで確保しておくお金について解説してきました。 これらを用意した残りが投資に回せるお金になります。 つまり、投資に回せる金額は総資産から「生活防衛資産」と「使う予定のあるお金」を差し引いた残りです。 総資産 - 生活防衛資産 - 使う予定のあるお金 = 投資できるお金 この考え方のポイントは生活を安定して営むためのお金は絶対にわけて確保しておくということです。 必要なお金を用意しておくからこそ安心して長期投資できるようになります。 逆に、投資する金額を先に決めて無理をするのは絶対にやめましょう。 NISA貧乏という言葉もありますが、投資とは生活もままならない状態でおこなうものではなく安定した生活の先にあるものです。 将来の出費に安心できない状態では適切な投資判断をおこなうことはできません。 まずは生活防衛資産と使う予定のあるお金を切り分けるところからやってみましょう。 投資に回す金額が決まったら次に悩むのが実際にお金を投資する際の進め方です。 一括で投資するか時間をかけて積み立てるか、やり方によって結果も心理的な負担も変わります。 次回はこの一括投資と積立投資の違い、そしてドルコスト平均法について考えていきます。

2026年7月31日

オルカン100%ではなく債券を組み入れよう

前回は資産運用のベースにオルカンが選ばれる理由を書きました。 世界中の株式を時価総額の比率どおりに持てる商品なので株式の部分はこれ1本でも問題ありません。 何を買えばいいのか迷ったときの答えとしてよくできています。 ただ資産運用そのものをオルカンだけで済ませてよいのかどうか、となると話が変わってきます。 オルカンしか持たない状態は資産のすべてを株式に置くことになるからです。 これはリスクが高く資産運用の基本から見ると良いやり方とはいえません。 なぜリスク管理が必要なのか概観を掴みましょう。 株式100%はリターンしか見ていない 株式100%という配分は期待リターンがもっとも大きくなる形です。 それだけ聞くと良いことのよう見えますが、その代わり値下がりも丸ごと引き受けることになります。 つまり長期的には値上がりするが一時的に強烈な値下げが起きうるということです。 これが自分にとって問題がないのかどうか考える必要があります。 2008年リーマン・ショックでは全世界株式でも高値から5割を超えて下がりました。 最終的には元の値段を超えて成長していますが元の値段に戻るまで何年もかかりました。 将来的に戻るという経験則は当時も今と同じくわかっていましたが、多くの人は耐えきれず資産を手放してしまいました。 誰もが暴落が起きても自分なら耐えられると考えています。 長期的に伸びるのだから値下がりで手放すなんて愚かだ、と。 ところが実際に下落が始まってみると1割減るような変化ですら狼狽して売ってしまう人は少なくありません。 SNSを眺めていればそういう人をたくさん見かけることができます。 想像している以上に目の前で資産が減っていくストレスは耐え難いものです。 そして、気持ちの面で耐えられたとしてももうひとつ問題が残ります。 下落の時期と資産を使う時期が重なる可能性です。 出費の予定というのは相場の都合に合わせて動いてくれません。 相場が悪いから大学の進学を1年待ってほしいとは言えないわけです。 もしリーマン・ショックと出費が重なればあなたは半分になった資産をそのまま取り崩すことになります。 自分に合ったリスクに収める そこで必要になるのが自分に合った水準までリスクを抑える管理です。 やり方そのものは難しくありません。 定番といえるのが債券を組み合わせるやり方です。 債券は株式に比べて値動きが小さいため株式と一緒に持っておけば全体の下がり方は株式だけの場合より穏やかになります。 また、株式と債券は異なる値動きをするためお互いに打ち消し合ってリスクを減らします。 単純に株式と債券のリスクの平均以上にリスクを減らす効果があるのです。 では、株式と債券はどれくらいの割合でもてばよいのでしょうか? 自分が受け入れられるリスクのほうから考えるとよいでしょう。 債券の比率が2割から5割のどこかに落ち着くことが多いです。 古典的に株式と債券の割合として上げられるものは50:50や60:40があります。後者は株式が60%です。 これは割合のシンプルさ、歴史的に多くの商品で使われてきたという背景があります。 他にも年齢の数だけ債券の割合にするというものもあります。 引退が近づくにつれて債券比率を高めリスクを逓減するということですね。 いずれにせよ、重要なのは心と支出の両面からみた自分が受け入れられるリスクです。 資産が減っても気にならず当面は使う予定もないなら債券を2~3割ほどにしてリターンを狙ってもよいでしょう。 一方で値下がりがどうしても怖い人もいます。 子どもの教育費が控えていたり住宅の購入や引退が近かったりする場合もありますね。 その場合は債券を4割から5割まで増やしておくほうが落ち着いて続けられるでしょう。 オルカン1本で終わらせないために オルカンが良い商品であることは変わりません。 株式の部分をこれ1本で済ませる判断にも十分な合理性があります。 ただ資産運用の全体をオルカンだけで終わらせてしまうのはリスクの管理ができていないかもしれません。 将来の出費の予定と自分がどこまで下落に耐えられるかを見たうえで債券を組み入れておきたいところです。 この一手間が資産運用を長く続けるための土台になるのだと思います。

2026年7月27日

資産運用のベースにオルカンが選ばれる理由

資産運用でまず何を買うか考えたとき多くの人がオルカンを選んでいますね。 オルカンとはeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の愛称で、世界中の株式を時価総額の比率どおりに保有できる投資信託です。 この時価総額の比率どおりという部分が実は資産運用の原則に照らしてもっともニュートラルな配分にあたります。 なぜ全世界株式の時価総額加重平均がベースに選ばれるのか整理してみます。 時価総額加重平均がニュートラルな理由 オルカンは世界中の株式に時価総額加重平均という方式で投資する商品です。 時価総額とは株価に発行済み株式数をかけたもので企業や市場全体の規模を示す指標にあたります。 オルカンはこの時価総額の比率をそのまま反映する形で世界中の株式を組み合わせています。 一般的な資産運用の考え方として市場全体の構成比率どおりに保有することがベースとなっています。 この理由は単純で、この割合が世界中の投資家が売買した結果そのものだからです。 時価総額比率は世界中の投資家の判断が集積した結果です。 この比率どおりに保有することは特定の見方を主張せず市場全体の判断をそのまま受け入れる立場と言えます。 オルカンはこの時価総額加重平均をほぼそのまま再現した商品なのでベースとなる商品としてよく買われているということですね。 オルカンは賭けをしないニュートラルな選択肢だといえます。 時価総額加重平均が基準になるということ言い換えるならば、時価総額加重平均から外れた配分は市場平均に対して意図的に賭けをしているともいえるでしょう。 市場全体の判断とは違う判断をするということですから、これは裁量をもったトレードに近づくわけです。 その賭けが報われるかどうかは事前にはわかりません。 S&P500や日経平均などを買って時価総額の加重平均から離れるということは、まさしくこのニュートラルな状態からあえて外れるという選択です。 もちろん、バランスが外れること自体が悪いわけではありません。 しかし、その判断は慎重に行う必要があります。 下手にバランスを崩すのは単にリスクだけを増やしていることになりかねません。 根拠なく「アメリカがいいと聞いたからS&P500を増やす」のような判断をする人は多く見かけますが、これは投資ではなく何も考えずアメリカに賭けるギャンブルだということを理解しておく必要があります。 まとめ オルカンのように世界の時価総額平均が絶対の正解というわけではありません。 アメリカ株や日本株に多めに配分したり個別株を一部組み込んだりする戦略もあります。 ただ、それは時価総額加重平均がニュートラルな基準であるということを理解したうえでの応用の話です。 土台となる資産をどこに置くか迷ったときにオルカンが選ばれやすいのはこうした理由があるからです。

2026年7月24日