仕事をしているとよく言われますよね。「相手の立場に立って考えろ」って。お客さんが何を求めているか想像しろとか上司がどう受け取るか先回りしろとか。まあ正論だし、面と向かって反論しづらい。でも僕はこれ言うほど役に立たないというか事故のもとだと思っているんですよ。

なぜかというと「相手の立場で考える」って実際にやってみると相手の頭の中を読む作業じゃなくて自分の願望を相手に投影する作業になりがちだからです。

たとえば提案資料を作るときに「お客さんの立場で考えるとこの機能が一番刺さるはず」と何時間も練り込んで持っていったら先方が欲しかったのは全然別のところだった、みたいな経験ないですか。あれは相手の気持ちを当てたんじゃなくて自分が推したい案を「相手もきっとこう思っているはず」という形で正当化していただけなんですよね。

人は相手を思いやっているつもりでたいてい自分が見たいものを相手に押し付けています。「あの人は急かされるのを嫌うはず」と思って連絡を控えたら本当はさっさと答えがほしかった。「上司は細かい報告を面倒がるはず」と要約して伝えたら肝心なところを省くなと怒られた。全部こっちの想像で相手は一言もそうとは言っていないんだからまあ100%自分が悪いです。

で、これを一発で解決する方法があるんですよ。素直に聞けばいいんです。

「どういう形だと一番助かりますか」「これとこれだとどっちがいいですか」って直接本人に確認する。たったこれだけで想像の精度がどうとか悩む必要が消える。立場を推し量るより本人に聞くほうが速いし正確に決まっているんです。答えを持っている人が目の前にいるんだから。

想像はタダで何時間でもできるけど当たっている保証はゼロです。質問は一瞬で正解が返ってくる。なのにみんな聞くより想像するほうを選ぶ。聞くと無能に見えるとか相手に手間をかけて悪いとか察するのが気遣いだとか、そういう刷り込みがあるからなんですよね。

でも本当の気遣いは思いやりを押しつけることじゃなくて相手が望むものをちゃんと渡すことです。そのためには想像で埋めず聞いて確かめるのが一番手っ取り早い。

「相手の立場で考える」のは聞けないときの最終手段でいい。相手に聞けるなら考える前に口を開きましょう。