やりたい仕事を探すっていうのを一旦やめて、それよりも先に心底やりたくない仕事から逃げてみたらいいんじゃないかっていう話をします。

世間はだいたい逆を言いますよね。「本当にやりたいことを見つけよう」とか「天職を探せ」とか「好きを仕事にしろ」みたいな。でも僕はこの順番がそもそも間違っていると思っていて、やりたいことを足す前にやりたくないことから離れるほうがずっと大事だと思っています。特にやりたくないことまみれの仕事をしている人は。

たとえば理不尽に怒鳴る客の電話を一日中受けるとか、誰も読まない資料を体裁だけ整えて延々と作るとか、心の底からどうでもいいと思っている数字のために自分をすり減らすとか。ああいう仕事を月曜から金曜まで続けていると休日に何をしてもいまいち回復しなくて、気づくと頭の中がずっとどんよりしたままになる。まずはここから抜けるのが先なんですよ。

そもそもやりたい仕事なんてそうそうあるものではないんですから。

心からやりたいと思える仕事に出会えるのはかなり運がいい人の話で、ほとんどの人は一生かけても巡り合えなかったりします。確率の低いものを引き当てようと頑張るのはしんどいし空振りも多い。なんなら僕も別にソフトウェア開発という仕事は天職だなんて全然思ってないです。

一方でやりたくない仕事のほうは驚くほどはっきりわかります。やってみて吐き気がするとか日曜の夜に憂鬱になるとか。体が先に答えを出してくれるので判定が簡単なんですよね。

だったら当てるのが難しい正解を探すより、はっきりわかる不正解を一個ずつ消していくほうが現実的です。やりたいことを見つけるんじゃなくてやりたくないことを引き算で減らしていく。こっちのほうがよっぽど打率が高い。

それにやりたくない仕事って人生の地力みたいなものをじわじわ削ってくるんですよ。

毎日嫌なことに耐えていると気力も体力も自尊心も少しずつ目減りしていって、いざ面白そうな話が来てもそれに飛びつくエネルギーが残っていない。あのときこうしてたらなーみたいな後悔ばっかり積もって人生つまんなくないですか?

逆に「最悪これだけは嫌だ」というものから距離を取れているだけで日々の消耗がぜんぜん違う。土台が削られていない状態をキープできていればチャンスが来たときにちゃんと動ける。やりたいことに出会えるかどうかも結局はこの余力次第なんです。なにより挑戦ができると人生が楽しくなる。

だからキャリアの話をするときも僕は「何がやりたいか」より先に「何だけは絶対やりたくないか」を決めたほうがいいと思っています。やりたいことは曖昧でも構わない。でもやりたくないことだけははっきりさせて、そこからは全力で逃げる。逃げるというと聞こえは悪いけどこれは立派な戦略です。

やりたい仕事を探すのは一生かけてゆっくりやればいいので、やりたくない仕事から逃げるのは今日から始めましょう。