本記事はウェブメディア「Modern Times」へ2023~2024年に寄稿したものを同メディアの閉鎖に伴い加筆・修正のうえ再掲したものです。
データ活用の誤解
世間では、データの活用について大きな誤解をしている人をよく見かけます。なにかビジネスに関わる大きな問題を解決して自分たちに大きな利益をもたらすとか、未来予知ができてあわよくば自分たちに都合がいい方向へ未来を変えられるような、そんな魔法のような何かだと思われています。当たり前ですが、データを使ってもそんなおとぎ話のようなことは起きません。
それでは、データを活用することでどんな利益を得られるのでしょうか?データから得られる利益はもっと地道で現実的です。データを活用するということはシンプルに言ってしまえばゴールへじわじわとにじりよるということです。ビジネスでは達成したい目標に向かって施策を打ち、そこへ少しずつ近づくものですが、データを利用することでその精度を高めることができます。
データ活用では情報を収集、解析しそこから得た知見や仮説をとおしてアクションをより良いものにするというOODAループやアジャイル的な運営が前提となります。サイクルを通した改善スパイラルです。このスパイラルにおいて情報を定量的に扱うことができるという点がデータを活用するメリットです。具体的に見ていきましょう。
サイクルをまわす
それでは改善スパイラルとしてデータ分析をどのようなサイクルと考えればよいでしょうか?本記事ではOODAループを参考に、データ分析を「情報の収集・解析・意思決定・実行」の4ステップからなる1つのサイクルとして考えます。必要に応じてステップを戻っても構いません。重要なことは良いアクションを行うために良い意思決定をすることです。逆算して意思決定のクオリティを上げるために必要な情報を集めて解析していきます。
さて、データの活用ではまず情報を収集し解析することから始まります。やみくもに情報を集めればよいわけではありません。前述したように、データを分析するということはよりよいアクションを起こすためにあり良い意思決定が目標となります。つまり意思決定に役に立たない情報を集めても意味がないのです。
意思決定に役に立つ情報とはどういうものでしょう?抽象的に言うならば意思決定に影響を及ぼす情報です。その内容によっては意思決定が変化しうるものと言ってもよいでしょう。逆にいえば、その情報があってもなくても何も変化がないのであれば意思決定において価値は高くないということです。
更に、情報の多くはそのままでは意思決定に役に立たないことがあります。集計や比較、可視化、もしくは統計学的な手法を通して意思決定に役に立つ形へ整形が必要です。
たとえば商品ごとの売上データや顧客の来訪頻度、購買までの時間などの情報はそれ単体では大きな意味をもちません。地域ごとに比較したり来訪頻度から月の顧客ごとの単価を出したりと紐づけたり比較したりすることで意思決定に使えるような意味のある情報ができます。場合によっては統計的な手法をもちいて数理モデルを構築することで、将来の変化をシミュレーションしたり自分たちにとって重要な変数を探したりすることもあります。
意思決定を下す前に意思決定を行えるだけの情報が集まっているのか確認することが必要です。不足があれば情報の収集や解析を行います。もちろん無限に時間と金があるわけではありませんので常に必要な情報がすべて揃うわけではありません。しかし、自分たちの意思決定においてクリティカルな情報がなんなのか優先度を考えることはできます。どんな情報があれば自分たちの考えが変わるのか検討しましょう。
必要な情報がそろったら意思決定を行いそれに伴いアクションを実行します。これでループが1周完了しました。このようなループを必要に応じて何度も実行します。しかし、単純にループを回せばよいというものではありません。ゴールへにじりよるのはここからです。
改善スパイラルとメリット
アクションを実行したら情報の収集や解析がまた始まります。まず、やるべきは施策の効果を確認することです。自分たちの意思決定が正しかったのかどうか検証しましょう。不足があれば自分たちの仮説のどこに誤りがあったのか分析します。施策の効果を経験や勘ではなくデータを分析で定量かつ客観的に評価を行えるという点がデータ分析の強みです。そして同時に次の意思決定に必要な情報を集めます。施策の実行によって状況が変わっているはずです。同じ情報を扱う場合でも再び情報を収集する必要があります。
アクションの前と後、見積もりと実績の両方を定量かつ客観的に得られるということがデータ活用の強力なポイントです。勘や経験に基づく判断に比べて施策の良し悪しを明確に理解し共有することができます。客観的であることで成功率の高い施策を選べるようになるだけでなく、定量的であることによってどの施策にどの程度投資すれば目的を達成することができるのか量の判断も精緻になります。つまり、予実の精度が向上するのです。
このようにしてデータを使うことで意思決定の精度が改善されます。成功率の高い施策を選べる、よりよい施策へ優先的に投資できる、妥当な投資の量を決められる。これこそが、データを活用することで得られる利益なのです。
もしあなたがデータ活用とは何かを発見することや予知だと思っているならばその考えを捨てましょう。そして目の前の問題を解決するためにデータがあったらもっとよい意思決定ができないか検討すべきです。最初は上手くいかないでしょうし時間がかかるかもしれません。しかし次はきっと今より上手くやれるはずです。