8.1 データガバナンス

データの活用が拡大するに伴いデータと分析基盤への適切な管理と統制がより重要になります。分析する人が安全かつ安心してデータにアクセスし分析できる環境を整えましょう。

アクセス権限管理

データには機密度の異なる情報が含まれているため適切なアクセス制御が必要です。多くの場合で部門や役職、プロジェクトごとにアクセス可能なデータ範囲を設定します。

最も気をつけるべきポイントは個人情報を含むデータです。基本的には個人情報を削除したりマスキングすることで安全性を確保します。このとき3層アーキテクチャで明確にわける設計にすると便利です。データレイクには生の個人情報があり、データウェアハウス段階で匿名化処理を行いデータマートでは個人を特定できない形式でデータを提供します。こうすることで多くの分析者はデータマートで安全に分析をおこない、必要に応じて権限を付与することでデータレイクから個人情報を含めた分析をおこなうことも可能になります。この段階的な匿名化により分析する際に安全にデータ分析を実行できる環境を構築します。

他にも役職や部門でわける考え方として、本部のメンバーはデータ全体が見られるようにしておきながら各店舗のマネージャーは自分の店舗のデータだけ見られるようにするというものがあります。この切り分け方は各社の考え方によって大きく異なる部分なので一概には決められませんが誰がどのデータを見てよいのか、見てはいけないのか明確に決めておくことが必要です。

詳細なアクセス制御としてテーブル・列・行といった複数レベルでの権限管理も可能です。テーブル単位では部門別に参照可能なデータを制限し行単位では営業担当者が自分の担当顧客のみ参照できるようにも制御できます。しかしこれらの詳細な制御は管理コストの増大と操作ミスによる事故が起きるリスクがあります。データの権限制御は3層アーキテクチャの単位やプロジェクト、ワークスペースなどなるべくわかりやすく大きな括りでわけることが望ましいでしょう。可能な限りシンプルな管理設計を心がけることが重要です。

利用ルールとガバナンス体制

データ利用に関する社内ルールを明文化しデータ分析基盤を利用するすべての人に周知することが重要です。個人情報の取り扱い方法やデータの取り扱い、特に社外への持ち出しなどの具体的なルールを策定します。また部門別のデータアクセス範囲や分析結果の共有範囲についても明文化し組織全体で一貫したデータ利用基準を構築します。

これらのルールはドキュメントの配布だけでなく研修や説明会を通じて分析をする人に教育し適切なデータ利用を浸透させます。特にセキュリティや個人情報の利用については定期的な理解度チェックによる継続的にルールの定着を図ることが必要です。新しいメンバーの入社時やシステムの機能追加・変更時には周知を徹底し常に最新のルールが共有されるよう体制を整えます。

ルールの策定と周知だけでなく監視も重要です。データへアクセスする全ての操作はログとして記録し継続的に監視します。誰がいつどのデータにアクセスし何を分析したかを追跡可能な状態に保ちます。ログには単なるアクセス履歴だけでなく実行されたクエリ内容や出力状況も含めることで詳細な利用実態を把握できます。

これらの利用状況はダッシュボードで可視化しておき、必要ならばアラートの設定をしましょう。ログの分析により利用傾向を把握し適切なアクセス権限の見直しやセキュリティ強化の判断材料としても活用できます。また定期的に利用状況をレビューすることで潜在的なリスクを早期発見し予防的な対策を講じることも重要です。

継続的な改善

データ分析基盤の利用者からのフィードバックを収集し分析基盤の継続的な改善を図ります。「このデータが見つけにくい」「処理が遅い」「新しい分析軸を追加してほしい」といった要望を定期的に収集し優先度をつけて対応します。

利用状況に応じたパフォーマンスの最適化は地道ですが重要な改善活動です。利用者数やデータ量、計算量、処理の応答時間などをダッシュボードで監視することで計算リソースの設定が適切か判断することができます。必要に応じてリソースを追加したり削減するとよいでしょう。

社内で似たような処理が高頻度におこなわれているならば事前処理されたテーブルを用意することで処理速度と計算負荷が改善できます。一方で、あまり使われない中間テーブルや参照されていないのに自動更新されているダッシュボードはリソース削減の対象として整理します。このような最適化により全体的なシステムパフォーマンスが向上し新たなビジネス価値の発見にもつながります。

データマートの管理においては似たようなデータマートの乱立を防ぐことが重要です。複数の部門が独自に類似の集計テーブルを作成することで重複したデータ処理による計算負荷とストレージ使用量の増大を招かないよう定期的にデータマートを見直し統合可能なものは一本化します。一方で、ビジネスの変化に応じて新たな分析ニーズが発生した場合は迅速に適切なデータマートを用意し組織の意思決定スピードを支援します。

データガバナンスは規制や制約ではなく「安心してデータを活用するための仕組み」として位置づけることが重要です。適切なガバナンスがあることで分析者は迷うことなくデータ分析に集中することが可能になり組織全体のデータ活用レベルを向上させることができます。