3.1 データ分析基盤の核心
データ分析基盤が従来システムと根本的に異なるのは「一元化」と「自動化」という2つの核心的な特徴にあります。
一元化による統合的なデータ管理
従来は各部門で個別にデータが管理されていましたが、データ分析基盤では全社のデータを一箇所に統合します。この一元化により、これまで不可能だった部門を横断した分析が日常的に実行できるようになります。
一元化の価値は単にデータを集めるということだけではありません。データのフォーマットを標準化し、マスターデータを整備することも重要です。例えば日付の形式やタイムゾーン、通貨などシステムによる細かな差異は分析の効率を下げ、ときには間違った分析の原因となります。
さまざまな指標の集計定義を統一することも一元化の要素の1つです。「売上」という指標について経営と営業と開発が異なる計算方法を使っているような状況はよくあることです。データ分析基盤をとおして集計の定義を統一することで誰が見ても同じ数値になります。これにより意思決定時のコミュニケーションがスムーズになると同時に意思決定の精度が改善されます。
自動化による継続的な処理
データ分析基盤のもう一つの核心は処理の自動化です。従来であれば一部のレポートが自動化されている程度に限られており少なくない月次集計や週次レポート作成が手動である状況は珍しくありません。データ分析基盤を活用することで自動化し人的ミスの排除と処理時間の大幅短縮を実現できます。
自動化は単に作業効率を向上させるだけでなくデータの鮮度を大きく改善します。手動で更新している場合だと毎日作業するのは簡単ではありませんがシステムで自動化していれば高い頻度で更新可能です。日次でデータを更新すれば業務の改善サイクルを高速に回すことが可能になります。リアルタイムなデータ連携によって広告や商品をリリースした数刻後には定量的な効果を検証することも可能でしょう。
また自動化により処理の一貫性も確保します。各々が手作業で処理していると意図しないミスや認識のズレが起きるものです。データ分析基盤をとおして自動化することで担当者による処理方法の違いや手作業による計算ミスといった問題が解決されます。
3.2 一元化と自動化を実現する4つの要素
一元化と自動化は、以下の4つの要素が連携することで実現されます。この4つの要素を通ることで生データのデータから前処理されたキレイなデータとなり分析結果へ加工されます。そして最終的に意思決定に役立つ情報として提供されるのです。
収集
データを分析するためには当然ですがデータ分析基盤へデータを流し込む必要があります。このプロセスでは社内の各業務システムや外部サービスからデータを取得しデータ分析基盤へ保存します。
販売管理システムのCSVファイル、Webサイトのアクセスログ、SaaSのAPIから取得するJSONなど内容も形式も取得方法も異なる多様なデータを収集します。データを分析基盤へ一元化するために重要なプロセスです。
蓄積
収集したデータを効率的に保管します。全社のデータを共通のルールで保存し、後の処理で高速にアクセスできるよう最適化された形で蓄積します。
データの蓄積と管理はデータの品質や処理の速度に直結します。適切な方法でデータを貯めていくためにも、どのようにデータを利用するのか想定し戦略的に進めることが必要です。
処理
保存されたデータを分析に適した形に変換します。生のデータからきれいなデータ、そして分析へと加工していきます。データ分析基盤で加工プロセスを自動化することによって効率よく一貫した品質のデータを継続的に生成させることができます。
大量のデータを処理するという計算量の多さはもちろん問題になりますが、それ以上に計算ロジックや依存関係を実装していく難しさがあります。用途に応じて多様な処理を実装が求められますしビジネスの変化によって柔軟な対応も必要となります。一方で間違った分析をしないように堅実な構築であることも重要です。また、データを加工するだけでなくデータの不整合の修正や異なるシステムの間での標準化などもすべき要素です。
提供
処理済みのデータを分析者が利用できる形で提供します。ダッシュボード、レポート、分析ツールなど、利用者のニーズに応じた様々な形でデータが自動的に出力されます。
データの活用が進めば進むほど多様なメンバーがデータを活用するようになります。利用者が円滑にデータを利用できるようツールの導入や権限の管理、利用方法の教育などの利用する環境を構築していくことが必要です。
3.3 構築から運用への道のり
データ分析基盤の構築は一朝一夕では完成しません。段階的なアプローチにより確実に価値を積み重ねていくことが重要です。
第1段階:基礎固め(最初の3-6ヶ月)
まず既存の重要なデータソースを特定し基本的な3層アーキテクチャを構築します。すべてのデータを一度に取り込もうとせず売上データと顧客データなど最も価値の高い2-3個のデータソースから開始します。完璧を目指さず「動くもの」を早期に構築し実際にデータを流して分析してみることで成果を生み出しながら課題を発見します。
第2段階:拡張(6ヶ月-1年)
基本機能が安定稼働した後は対象データソースを段階的に拡大します。データソースを増やすことで分析できるチームが増えるほか、横断的な分析がおこなえるようになります。
あわせて、データの活用を広げることを視野に入れて多くの人が自力で分析できるような環境の構築にも力を入れます。BIツールの導入・データカタログの整備・トレーニングの実施により、いわゆる「データの民主化」を目指します。
第3段階:最適化と管理(1年以降)
システムが安定し利用者が増加した段階でシステムの最適化をおこないます。処理性能の改善やコスト最適化、効率的な分析をおこなえるようにデータマートなどの構築をしていきます。
また利用者の増加にあわせてデータガバナンス体制を強化します。多くの人が安全に分析できるような環境を構築することで長期的な運用に備えます。
成功の鍵:小さく始めて大きく育てる
多くの企業がデータ分析基盤の構築で失敗する理由は「完璧なシステムを一度に作ろうとする」ことです。最初から全部門・全データを対象とした大規模システムを構築しようとすると要件が複雑になりプロジェクトが破綻するリスクが高まります。
成功するプロジェクトは「小さく始めて大きく育てる」アプローチを採用します。限定的な範囲で確実に価値を実証し段階的に拡大していく方法により失敗リスクを最小限に抑えながら着実に成果を積み重ねられます。
成功の鍵:継続的な改善
データ分析基盤は一度構築して終わりではありません。ビジネス環境の変化・新しい分析ニーズ・技術の進歩に応じて継続的に改善していく必要があります。定期的なシステム見直し・フィードバックの収集・新技術の検証を通じて常に最適な状態を維持しましょう。また組織の成長に合わせてシステムもスケールアップしていくことが重要です。
この章ではデータ分析基盤がどのような要素から成り立っているのか解説しました。次の章から具体的にデータ分析基盤を解説していきます。まずはデータの保存・管理の基本的な考え方と定番の3層構造について紹介しましょう。