2.1 データ分析基盤の定義と目的
まずはデータ分析基盤が企業にもたらす本質的な価値について整理していきましょう。
データ分析基盤とは企業内の様々なシステムやサービスから生成されるデータを統合・管理・分析するためのITシステム全体を指します。単なるデータベースではなくデータの収集から保存・加工・分析・可視化まで一連のデータ活用プロセスを支える包括的なプラットフォームです。
この基盤の最大の目的は組織内に散在するデータと加工のプロセスを一元化し迅速かつ正確な意思決定を支援することです。従来であれば、各部署が個別にExcelでデータを管理し月末になると手作業で集計作業を行っていたような状況を脱却します。専門的なITスキルを持たないビジネス担当者でも必要な時に必要なデータにアクセスし自分で分析できる環境を用意することでデータドリブンな意思決定が促進されます。
現代のビジネスにおいてデータに基づいた意思決定(データドリブン経営)は競争優位性の源泉となっています。データ分析基盤はこの変革を技術面から支える重要なインフラなのです。
2.2 従来のシステムとの違い
従来のシステムが抱える根本的な課題を理解することで、なぜ専用の分析基盤が必要なのかが見えてきます。
まず業務システムでデータを分析する場合の限界をみてみましょう。販売管理システムや在庫管理システムといった業務システムは少量のデータを高速に処理することに特化しています。一方で、大量のデータを処理するには向いていないため大量のデータを集計・分析することは現実的ではありません。また従来は週次や月次の売上集計程度でしたが現代では毎日生成される大量のWebアクセスログ・IoTセンサーデータ・ソーシャルメディアデータなど多様なデータを多角的に高い頻度で分析をおこなう必要があります。
従来のレポートシステムでは管理者が事前に定義した固定のレポートしか作成できませんでした。新しい観点での分析や想定外の質問が生まれるたびにIT部門への依頼が発生し分析結果を得るまでに少なくない時間を要していました。つまり意思決定において分析結果を得るプロセスがボトルネックという状況です。
加えて、このような複雑な環境では異なるデータソースを統合し一貫性のあるルールで管理するガバナンス体制が必要不可欠です。しかし、レポーティングのために部門間の連携を取ることは簡単ではありません。そのため、複数の部門が異なる定義で同じ指標を計算し、全社で一貫した数値を共有することがむずかしいという状態は珍しくありませんでした。
2.3 なぜ専用の基盤が必要なのか
データ分析基盤は前述した従来システムの課題を根本的に解決することを目的としています。
まず大量データの高速処理という課題に対しては分析専用に最適化されたアーキテクチャを採用しています。列指向データベースやメモリ内処理などの技術により数十億件のデータでも数秒で集計・分析が可能です。また業務システムとは物理的に分離されているため本来の業務処理に影響を与えることもありません。
統合分析の困難さに対しては異なるデータソースを統一的に管理する仕組みを提供します。売上データ・在庫データ・顧客データ・Webアクセスログなどを一元化することで部門を跨いだ横断的な分析が可能です。さらにデータの形式を標準化することで分析を効率化します。
また、全社統一のデータ定義や品質管理を一元的に管理できます。「売上」「顧客数」といった指標の定義を全社で統一し誰が見ても同じ数値になるようにします。同じデータ、共通の集計済みテーブルとダッシュボード、標準化された指標の定義によって同じ目線でデータを用いた議論が可能です。
データ分析基盤は単なるITシステムではありません。組織の意思決定プロセスを根本的に変革するインフラです。従来は「勘と経験」に頼っていた意思決定を「データに基づいた客観的な判断」に変えることで企業の競争力を大幅に向上させます。
データ分析基盤がもたらすこの変革の核心はデータの活用の拡大にあります。データ分析を一部のデータアナリストだけが扱える特別なモノではなく、現場の営業担当者から経営幹部まで誰でも必要な時に必要なデータを活用できる環境へ変えます。日常的なデータ活用により組織全体の判断精度とスピードが向上します。
もう一つの本質的価値は「組織の学習能力向上」です。データ分析基盤により過去の成功・失敗事例が蓄積され次の戦略立案に活用できます。どの商品がなぜ売れたのか どのマーケティング施策が効果的だったのか どの時期にどんな問題が発生しやすいのか。これらの定量的な知見が組織の財産として蓄積され継続的な改善を支援します。
この章ではデータ分析基盤を開発する目的やメリットを紹介しました。次の章ではデータ分析基盤のもつ機能について概要を解説していきます。